ことわざは、観察と経験そして知識の共有によって、長い時間をかけて形成されたものである。その多くは簡潔で覚えやすく、言い得て妙であり、ある一面の真実を鋭く言い当てている。そのため、詳細な説明の代わりとして、あるいは、説明や主張に説得力を持たせたり詰ったりと効果的手段として用いられることが多い。
慣用句と重なる部分もあるが、一般の文の中でその一部として用いられるものを慣用句といい、文の形をとるか、または簡潔ながら文に相当する意味を表すものをことわざというのが普通である。
ことわざの基本構造が「AはB」「AのB」「AよりB」といった偶数構造であることは、多くの研究者によって指摘されている。たとえば、折口信夫は歌とことわざの分かれ目を、歌が奇数律であり、ことわざが偶数律である点に着目した。また、池田弥三郎は俳句や川柳が偶数仕立てに短縮されてことわざに変化することに着目し、文芸とことわざの違いを説明している。
偶数構造を持つことわざに共通する点は2つあり、ひとつは、2つのものを対照させて提示することで、お互いを際立たせるレトリックとして機能するとともに、物事を弁証法的に見る点にある。もうひとつは、極限まで切り詰めた表現であることわざは、拠って立つ論理すら省略されている点にある。
アラン・ダンダスは、ことわざがことわざとして機能するには少なくとも1つの主題(topic)と1つの叙述(comment)を備えていなければならないと述べた。たとえば「紺屋の白袴」の場合、紺屋が主題で白袴が叙述である。1組の主題と叙述で命題を構成する必要があるため、1語文のことわざは論理的に成立しえない。